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エッセイ

オーファン・ポリシー(松岡洋平)

「政策空間」第33号(2006年5月)に発表した「オーファン・ポリシー―NPOが担うべきCitizen-Generated-Policyとは―」を掲載します。

オーファン・ドラッグとは

あなたが製薬会社の社員だったとしよう。どんなに効き目のある薬でも、その対象となる患者が世界で数人しかいないという状況に立たされた場合、あなたはその薬を開発しようと思うだろうか?

社会に貢献することは企業の使命の一つであることに間違いない。しかし、それはあくまで“経済的に見合う”ことが前提だ。

こうして製薬企業の経済性だけを考えてくると患う人が少ない病気の場合には、仮にそれが致命的に重大な病気であっても、その治療法の研究は手がける人が少なく進歩が望めない。こうした事態を防ぐため、稀な病気の治療薬は「オーファン・ドラッグOrphan Drug」と呼ばれて区別されている。オーファン・ドラッグは医薬品の開発において、審査機関に対する特別優遇措置や、販売する製薬企業への公的補助などによって開発が進められる。(1983年、米国でオーファン・ドラッグ法が制定され、「患者数が20万人以上または20万を越えているにもかかわらず、医薬品の売上高から研究費、開発費が回収できない疾病」を対象として公的補助などが整備された)

製薬会社は自社の薬剤ポートフォリオに基づき、目的の分野の薬をターゲットにしながらさまざまな化合物の成分を絞り込んでいくアプローチを取ることがほとんどであり、まずは企業として注力分野を絞り込み具体的なターゲットを定めた上で、実際に製品化につながるようなものを決定している。
こうした中で、オーファン・ドラッグのような稀な病気を治す研究などは進歩から取り残されてしまう。これは、政策作りとも重なる構造とは言えないだろうか。

オーファン・ポリシー

自民党、民主党それぞれに政策シンクタンクを設立する動きが具体化し、今後官庁主導ではなく、政治主導で政策提言を行っていくためには自然な流れだと思われる。しかしながら、そこに市民はどのように政策策定に関わることができるのだろうか?すぐに百戦錬磨の官僚と対峙する事は想定しづらい。
“政党”シンクタンクが取り扱う政策を考えて見ると、どうしても国家レベルでの政策やメディアへの露出度が高い項目が優先される。それは政党のパワーを決めるのはあくまで選挙だからだ。しかし、世の中には本当に必要とされていながら、改善されない政策がいくらでもある。なぜそうした状態が維持されているかと言うと、改善しようとする人の声が小さすぎるか、政治家にしても改善したところで自分になんのメリットもないような政策だからだ。(図1:政策の分類を参照)

こうした、必要だけれどもかえりみられない政策を、オーファン・ポリシーと呼びたい。これは何も新しい出来事ではなく、旧来から放置されてきたものでもあるが、予算や期間の制約によるものではなく、政策担当者の時間不足(人員不足)に起因する現象である。

「小さな政府」との名の下、行政サービスには民営化や簡素化の波が押し寄せている。今後は、政策作りそのものについても、既存の人員ではカバーできない領域については積極的に行政側が課題を公示し、インターネットなどを活用して、市民自らが各々の持つ専門知識を活かして、小さいながらも有効な政策作りを重ねていくことが、今後の日本社会にとって非常に重要だと思われる。

また、その際に大きな主体となるのは、NPOのような共通の意識ベクトルを持った市民集団や組織であろう。行政が積極的にオーファン・ポリシーを開示し、Citizen-Generated-Policyつまり「市民が発信する政策」という考え方が浸透していくかどうかこそ、このインターネット社会において、リアルに社会との繋がりを感じつつ、個の可能性を最大化する鍵を握るのではないか。

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