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エッセイ

地域マーケティング―グローカル時代の生き残り戦略(平山真也)

戦後の地方経済を支えてきた中央からの資源配分システムは、国の財政悪化と共に、維持が不可能になりつつある。地方が今後繁栄し生き残るためには、まさに「自立」の道しかない。構造改革特区や税源移譲、規制改革と地方分権の大きな流れの中で、独自性の高い地域づくりを可能にする土壌の整備が徐々に進んでいるが、では、その土壌で何をするのか。――従来の安直な振興策を繰り返してはならない。今、地方に求められるのは、思い入れを排した的確かつ客観的な評価に基づく「地域マーケティング」の試みである。

地方自立の時代

長期低迷に苦しんだ日本経済だが、最近ようやく企業の業績改善を伝えるニュースも増え、政府・日銀の景気判断にも自信が感じられる。とは言え、「失われた10年」の間に日本経済が経験してきた疲弊は尋常でない。

現在、一部の地域には明るい兆しが見えるものの、総論として東京一極集中がますます進んだため、日本の「地方」はかつてない苦境に立たされている。地場産業がバタバタと音を立てて崩れ、地方交付税交付金に代表される中央からの資源配分への依存度は危険水域に達し、また少子高齢化も大きなマイナス要因となり、多くの地方では暗い展望しか見えなくなっている。

しかも、頼みとする中央からの資源配分システムは、国の財政悪化と共に、維持が不可能になりつつある。戦後の地方経済を支えてきたシステムが崩れつつある中、地方が今後繁栄し生き残るためには、まさに「自立」の道しかないのである。

しかし、すべてが地方にとって暗いニュースばかりかと言うとそうでもない。一部には、この逆境にありながらも、独自の戦略でそれを乗り越え、繁栄を謳歌している地域もあるのである。そして、地方がいくら独自の取り組みにより地域の発展を目指しても、中央の規制によりがんじがらめになっていた状況が、小泉改革の構造改革特区や税源の移譲、規制改革と地方分権の大きな流れの中で、徐々に変わってきている。独自性の高い地域づくりを可能にする土壌の整備が進んでいるのだ。

本稿では、こうした地方の「自立の必要性」と「自立のための戦略的自由度の向上」という二つの大きな流れの中で、地域に繁栄をもたらすための「仕組みづくり」である「地域マーケティング」について、MPIの考え方を紹介したいと思う。


今、なぜ「地域マーケティング」なのか

今、なぜ地域マーケティングという考え方に注目するべきなのか。それを述べる前に、MPI流の「地域マーケティング」の定義を明らかにしておきたい。MPIが考える地域マーケティングとは、おおまかに言えば「ある地域に経済的なベネフィットをもたらすための仕組み構築」ということになる。

通常、マーケティングという言葉は「売れるための仕組み作り」と定義されるが、これを忠実に地域経済に適用したものと言えよう。なお、ここに言う経済的ベネフィットとは、最終的に金銭という形で得られる直接的なものだけでなく、その金銭を生み出す装置・仕組みをもたらすこと自体も含意するものとして考えていただきたい。

我々の考える地域マーケティングとは、大きく分けて二種類のベネフィットを追求するためのものと言える。

一つは長期にわたってその地域に経済的価値を生み出す「恒久的ベネフィット」である。恒久的ベネフィットの例としては、企業や大学など、価値を継続的に生み出す装置が挙げられる。そうした価値の源泉となる装置を誘致するための地域マーケティングをMPIでは「恒久的ベネフィットマーケティング」と呼んでいる。

二つ目のベネフィットは、恒久的なベネフィットと反対に、あくまで一時的な価値である「一時的ベネフィット」である。この例としては、観光客の来訪やイベントの開催などが挙げられ、こうしたベネフィットをもたらすための地域マーケティングを、我々は「一時的ベネフィットマーケティング」と呼んでいる。

読者の皆さんの中には、観光などは一時的なベネフィットだけをもたらすものではないとの反論もあるだろうが、我々が一時的ベネフィットと恒久的なベネフィットを区別する理由は、そもそも両者ではマーケティングのアプローチが根本的に違うと思われるからである(図1)。この違いについては後に説明しよう。

図1・地域マーケティングの2領域

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さて、先程の話題に戻り、今なぜ「地域マーケティング」が必要なのかについて述べてみたい。

現在、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」なるものが国を挙げて行われており、日本でもようやく地域の各プレーヤーの連携を軸にした施策が打たれ始めているが、これまで、地域への「経済的価値」の誘致活動は、概ね公共セクターと民間セクターの連携も無く、本来参加すべきプレーヤーが参加していない、ちぐはぐなものが多かったと言える。また、地域マーケティングの対象となるべき「顧客」や「競合」を体系的に捉え、的確な情報収集に基づいて、参加すべき全てのプレーヤーが連携して有効な施策を実行するという取り組みが、まったくなされて来なかった。

しかし、先述したように地域が置かれる状況は非常に厳しいものとなっており、そのような環境下では、限られた資源を効果的に活用し、最大限の便益を得ることが求められる。そして、効果・効用を具体的かつ効率的に得るためには、戦略を立案するための体系的な仕組みと、スピーディーな実行力とが必要である。そして、企業におけるマーケティングの取り組みと同様、これに対する示唆を「地域マーケティング」は与えるものなのである。地域の自立が改めて問われている現在だからこそ、地域マーケティングは注目に値するものだと言えよう。

地域マーケティングのポイント

これから具体的に地域マーケティングという手法を解説していくにあたり、まず基本的なポイントとなる地域マーケティングにおける3Cと4Pの考え方について述べてみたい。

地域マーケティングにおける3C

言うまでもなく、3C(Customer〔顧客〕・Competitor〔競合〕・Company〔自社〕)は経営戦略立案の際に使われる基本的なフレームワークだが、地域マーケティングにおいて3Cを用いる場合に問題となるのは、三つ目のC、すなわちCompany〔自社〕をどのように捉えるかである。

先程述べたように、地域マーケティングとは「ある地域に経済的なベネフィットをもたらすための仕組みの構築」であり、ここに言う「地域」がまさにCompanyに該当するのだが、この「地域」という概念をどのレベルで捉えるかがポイントなのである(図2)。

図2・地域マーケティングにおける3C

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と言うのも、多くの場合がそうであるように、何を基準(境界線)としてひとつの「地域」と見做すかが曖昧であれば、その地域にはマーケティング主体としての統一性や十分な規模が欠けてしまうことになるからである。

この問題を解決するために、MPIではひとつの「地域」の範囲を明確に見定める上で、図3のようなフレームワークを使っている。

図3・地域の枠の設定

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この図に示しているように、同一の地域と呼べるためには、経済的便益の共有度が高く、なおかつ顧客からの同一地域としての認知度が高い必要性があるのである。

なお、当然のことながら同一地域でもマーケティングをどのような目的のために行なうかによって、このマトリックス上での位置は変わってくる。

例えば、図4は国内で旅行をするときに顧客が意思決定をするプロセスを描いたカスタマー・ディシジョンツリー(CDT)の例である。この例では、同じ関西地域の都市ではあるものの、神戸と大阪を同じコスモポリタンな体験の一選択肢として位置付けている。従ってこの場合、神戸と大阪は恐らく経済的便益の共有度が高くても、(一観光客がどちらかの都市を訪れることでの関連産業への波及効果が高くても)顧客が同一地域と見做していない場合、アライアンスを組むべき隣接地域となるのであり、マーケティング主体はあくまでも「神戸」「大阪」なのである。

図4・CDT(1)――地域が分かれている場合

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次に、別の例として図5をご覧いただきたい。この例ではアジア地域にオフィス立地を考えている欧米企業が関西地域を同一のものとして認識している。当然のことながら、オフィスが関西地域に立地されれば、関西全域に経済的便益はもたらされるであろうから、この場合は同一主体としてマーケティングを行うべきなのである。

図5・CDT(2)――地域が分かれていない場合

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このような分析を行なうことで主体を明確にすることができれば、無用な競合や無駄なアライアンスなどを避けられるのである。

地域マーケティングにおける4P

次に二つ目のポイントである、4Pのとらえ方について解説したい。通常マーケティングで4PといえばProduct(製品)・Place(場所・チャネル)・Price(価格)・Promotion(プロモーション)のことであるが、地域マーケティングを考える際には、4PのうちProductと Priceに特に着目する必要がる。図6をご覧いただきたい。

図6・地域マーケティングの4P

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一時的ベネフィットである観光などの場合、Productはあくまでも「体験」であって、個々の観光体験を構成するサービスや製品でないことを認識する必要がある。恒久的ベネフィットにおいては、企業などが立地する際の「環境」全体がProductなのであり、個々の工業団地や優遇措置が Productであるというわけではない。

この考え方には、三つの重要な示唆が含まれている。まず、①Priceを考える上では「体験」や「環境」の総コストが対象であり、個々のPriceだけが判断要素ではないということである。

次に、②Productを考える際には「体験」や「環境」全体が対象となるのであり、例えば観光の場合、観光客の「体験」を構成する多くの要素に目を向けなければならないのである。他の要素が弱いのに、いくら宿泊施設だけに力を入れても、総合的な競争力を向上させることはできない。

また、③これは地域マーケティングの実行主体、および内部組織を考える上でも重要になる。なぜなら、顧客に対して正しくProductの価値提案を行うためには、Productを構成するすべての要素において価値提案を行ない得るような組織体制が必要となってくるからである。

地域マーケティング戦略立案のプロセス

それでは、これまで解説してきた地域マーケティングのポイントを踏まえて、具体的に地域マーケティング戦略案の策定手法について言及してみたい。我々MPIで考える地域マーケティング戦略策定プロセスは、おおまかに述べて図7のようになる。

図7・地域マーケティング戦略策定プロセス

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ビジョンの設定と地域の「枠」の明確化

地域マーケティングの最初のステップは、地域マーケティング戦略案の策定主体となっている組織が実現しようとしているビジョン・目標を設定もしくは確認する事から始まる。

ビジョンや目標は様々なものが考えられるため、詳しく言及する事は避けるが、設定されたビジョン・目標は、少なくとも次の要件を満たしている必要があると思われる。

まず、当たり前の事ながら、ビジョンや目標は方向性を具体的に明示しているものである必要がある。「市民生活が豊かな都市を目指す」というようなものはビジョンでも目標でもない。「市民生活」や「豊かな」といった言葉の定義がはっきりしない上、何をすればそれを目指せるのかがまったくわからないのである。

逆に言えば、ビジョンや目標とは、いわゆる5W1H(What・When・Who・Why・Where・How)の原則に則って、具体的に何をどのように目指しているかをしっかりと認識できるものである必要があると言えよう。さらに付け加えるなら、「ある地域に経済的なベネフィットをもたらすための仕組み構築」という地域マーケティングの定義にしっかりとあてはまり、それをいかにして実現するかという方向性を示し得るビジョンや目標でなければならないということになる。

地域マーケティング戦略策定のステップ2は、地域の枠を設定するという、先程解説したフレームワークの適用である。ただし、この段階では必ずしも地域の枠を最終的なものとして確定する必要はない。ここではおおまかに仮設定して、もしもその後に問題点が出てきた場合は機動的に変えていくことが必要である。つまり、このステップでは肩に力を入れずに、合理的な範囲で調査や考察を行い、地域の枠についてある程度の目星をつけるのである。

ケイパビリティ・アセスメント

ステップ3では、設定された地域が保有する資源や能力の現状を評価する「ケイパビリティ・アセスメント」を行なう。地域マーケティングとは、基本的に既存の能力や資源のポートフォリオをいかにうまくマネージして好ましい「地域ブランド」をつくるかが問われる試みである。そのため、何がその地域にとっての手持ちの駒で、どこにその発展の可能性があるのかということを探るこのステップは非常に重要である。

個人的な感想だが、従来の地域振興の取り組みを見ていると、その地域の保有する能力や資源をまったく無視した取り組みが数多く行なわれているように思える。自然美の豊かな地域に、わざわざその景観を壊すような近代的なビルを建てたりするのがそれに当たる。地域の特性に関わり無く、いわば「ミニ東京」をつくろうとしてきた結果、競争環境の中で戦うための必須要件である「差別化」という発想が欠落してきたように思えてならない。だからこそ、このケイパビリティ・アセスメントのステップを入念に行ない、その地域に適した発展の可能性の糸口を見出すことが必要なのである。

地域マーケティングのケイパビリティ・アセスメントは、既に設定しているビジョンや目標に応じて大きく変わってくる。また、観光客のような一時的ベネフィットを得ることを目標とするのか、産業クラスター構築のような恒久的なベネフィットを得ようとするかによっても方法論は異なったものとなる。ただし、基本的には、プロダクトである「体験」や「環境」のコスト-ベネフィットの分析や、それらを創出する「能力」に焦点を当てて評価することが重要である。また、一見マーケティングの目的に関係が無いように見えても、有形・無形資産の両方や地域のその他の能力や特徴を概要レベルで分析することも非常に重要である。

図8・地域ケイパビリティ・アセスメント

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例えば、もし、ある都市が観光客を誘致しようとしている場合、まず大切なのは、その都市の「体験」のコアは何なのかということを見極め、それにどれくらいの価値があるかを評価することである。

この場合、京都観光という体験のコアとなるものは、その歴史や伝統、「和」の雰囲気などであろうから、それがいったいどれくらいの価値を持つものなのかを分析するのである。もっとも、この時点では、必ずしも厳密な分析でなくても構わない。重要なのは、地域の持つある程度の「強み」「弱み」を把握することと、「発展可能性」を見極めることなのである(逆に言えば、無意味な方向性を選択肢から排除し、後のフェーズでより意味のあるものに集中できればよいのである)。

また、この段階では概要レベルになる可能性があるものの、地域の文化や特徴を押さえておくのも重要である。なぜなら、仮に外国人観光客を多く受け入れる戦略が市場分析や提供できる価値を分析した結果の論理的帰結であったとしても、その地域の閉鎖性が非常に強く、外国人の受け入れが困難だということであれば、立案された戦略は絵に描いた餅になるか、もしくは実行時に乗り越えるべき課題を認識できずに失敗に終わる可能性があるからである。地域の特徴や文化を十分把握し、受け入れ可能なものと不可能なものをしっかりと見極める必要がある。

マーケティング環境・市場の分析

地域マーケティング戦略立案プロセスの次のステップがマーケティング環境の分析である。ここで肝となるのは、前ステップですでに実施したケイパビリティ・アセスメント(つまりCompany 自地域)の分析を踏まえて、マクロ環境・顧客動向・競合動向を実施する事である。つまりあまり意味のないものには時間をかけないことである。ケイパビリティ・アセスメントの目的は「発展可能性」を見極めるわけであるから、必要となる分析の仮説は十分に立てられるはずである。

図9・マーケティング環境の分析

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なお、ここの時点で特に解説したいのは顧客動向だ。ここで忘れてはならないのは、今現存する顧客の属性を明らかにした上で、徹底的に彼らの動向を分析する事だ。またマクロな市場環境の分析と連動させ、潜在顧客で有望な顧客はどこにいるのかを把握する事も忘れてはならない。但し、このステップでは膨大な情報から市場機会(当然脅威も把握する必要があるが)を発見することが目的なので、そのためにもあまり無意味な分析は避けて、効率的に関連ある情報を探っていくべきである。

マーケティング環境を分析した後は、そのアウトプットを活かして市場機会を発見する事である。このステップは個別性が高いため詳細な説明は省略するが、これまでの分析をしっかり行っていれば、後は創造性を十分に働かせる事で答えが見えてくるものと思われる。ただ忘れてはいけないのは、既存あるものを活かしてどれだけ「発展可能性」があるかを見極めることがポイントである。(この段階で、例えば「アジア市場の観光客をねらう」というような市場機会の発見・特定は無意味である。あくまでも、次に細分化できる程度まで掘り下げる必要がある)。

次に市場の細分化を行うわけだが、この段階で重要なことは、①優先順位付けが明確であること、②利益を確保するための有効規模が確保されていること、③到達可能性を持ったセグメントであること、④測定が可能であること、である。もしこれらの条件が満たされていない場合は、有効なアクションを取ることが不可能であり、細分化として意味があるとは言えないのである。

標準市場の選択、ポジショニング

市場の細分化が終わった後は、標的市場を選択するステップに入る。標的市場選択にあたっては、この次のステップのポジショニングにおいても言えることだが、競争に勝つための手段だけでなく、競争を避けるための手段や方法を考えることも非常に重要である。特に、地域をマーケティングするということは制約条件や競合も非常に激しい中で戦うということであり、正攻法でNo.1になれる可能性を持つ地域はごく少数である。(東京などのごく一部のグローバルなパワーを持つ地域でない限り、正面作戦で圧倒するのは非常に難しい)。特定の魅力的なニッチ市場に集中し、オンリーワンを目指すことが、結果的に成功への近道であると言える。

標的市場を選択した後は、強力なポジショニングを行なうことである。ポジショニングとは、言い換えればその地域が目指すバリュー・プロポジション(価値提案)を行なうことであり、顧客に対して、独自性のある魅力的な提案を行なわなければならない。

また、ポジショニングを行なう上で重要なことは、売ろうとしている価値の全体を含めた価値提案を行うことである。つまり、地域マーケティングの売り物である、「環境」や「体験」を総括した価値提案である必要があるのである。

しばしば、産業を誘致する際に、減税措置や工業団地のインフラの優位性などが一元的に宣伝されることがあるが、企業立地を決める際に重要なのは、ある一面における価値ではなく、立地環境を総合的に評価した際にどのような価値があるのかということである。勿論、税制面やインフラ面などで価値を持っていることは重要であるが、それを伝える上でも、あくまで環境全体を考慮した際に、それがどういう意味を持つかを伝える必要があるということである。

ポジショニングを行なった後は、マーケティング・ミックスを考える。マーケティング・ミックスの4Pのうち、Place(この場合、サービス提供のチャネルという意味以外にセールスチャネルとしての意味合いがある)およびPromotionはまだしも、ProductとPriceは簡単に変えられるものではない。だからこそ、価値の根幹を形成するProductとPriceを根気よく形成・創出する必要があるのである(ステップ3でケイパビリティ・アセスメントを行なうことの重要性を強調した理由も、ProductとPriceは簡単に変えることができないからである。簡単に変えられないものであるが故に、しっかりと発展可能性があるものを見極め、ProductおよびPriceの充実に努める必要があるのである)。

特に魅力的なProductを創出するためには多くの機能を統合し、一つの鋭い価値提案へと変換していく必要があるため、明確なビジョンの下に優先順位をはっきりと定め、関係プレーヤーを有機的に結合させていく必要がある。


地域マーケティング戦略成功の鍵 

これまで地域マーケティング戦略策定プロセスについて述べてきたが、これらを踏まえて、改めて地域マーケティングを成功させる上で重要な点について言及しておきたい。マーケティング・ミックス構築の部分でも述べたように、地域マーケティングにおけるProductは「環境」や「体験」であるため、その地域を構成する様々なプレーヤーを有機的に結合し、魅力あるProductを作っていく必要がある。いくら魅力的な市場セグメントを発見し、理想的なポジショニングとマーケティング・ミックスを構築できたとしても、こうしたProductの創造がなされなければ意味がないのである。

従って、実現可能性を高める上でも、地域の枠をはっきり定めることによって必要なプレーヤーを早期の段階で巻き込むことが重要であり、そのためには誰もが分かり易い論理的なフレームワークに従って案を策定し、関係者の「納得性」を高めることが重要である。また、戦略がその地域の特性及び文化を十分加味した受け入れ可能なものであることの重要性も、再度強調しておこう。

平山真也〔ひらやま・しんや〕
NPO法人MPI理事長。1978年生まれ。小学生の頃から9年間アメリカで生活の後、京都大学法学部在学中の1999年、MPIを創立。大学卒業後、コンサルティング大手のベイン・アンド・カンパニー、株式会社リクルート勤務を経て、現在カート・サーモン・アソシエイツ(グローバル経営コンサルティング会社)コンサルタント。

※この記事は2004年5月発行『New Beginning』第3号に掲載(肩書き等は当時)。

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