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Interview

日本、国際社会で主体性発揮せよ―民間シンクタンク活性化が鍵:エズラ・ボーゲル氏

今後の国際社会において日本はどうあるべきなのか。MPIが志向する民間・非営利のシンクタンクに求められる役割とは。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者として知られる全米屈指の識者、エズラ・ボーゲル氏に聞いた。

■Interviewee
Ezra Vogel(エズラ・ボーゲル)
・アメリカにおける日本・アジア研究の権威の一人であり、日米両国でベストセラーとなった『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(Japan as No.1: Lessons for America (Harvard U. P., 1979) の著者。
・ボストン近郊で学ぶ日本人学生を私邸に招き日本の明日を構想する「ハーバード松下村塾」を主催。
・日本語のみならず中国語も堪能であり、現在は中国研究にも熱心に取り組んでいる。

■日本にはシンクタンクが必要だ

――現代社会におけるシンクタンクの重要性、特に日本の状況についてどうお考えですか。

民主主義社会の中で、十分な政策提言を行うにあたっては、多様な視点が必要だ。官僚は自らの省益を優先する場合があるため、これを是正する観点からも独立したシンクタンクというのは非常に重要な役割を果たす。天下り官僚――もちろん彼らの多くは優秀な人材だが――によるシンクタンクでは狭い利益を代弁する可能性がある。

さらに日本の場合は、特に国際的な課題に対する提言能力が他の主要国に比べて低いと思う。この一因としては、的確な政策提言ができ、かつ影響力のあるシンクタンクが存在しないことが挙げられよう。また、国内問題についても政治家の立法能力の向上が期待される中で、政府とは独立したシンクタンクが果たすべき役割は大きいものがあろう。

――米国では、シンクタンクはどのような状況にあるのでしょうか。

米国では防衛関係・国際関係を中心に多くの優れたシンクタンクが存在する。彼らの活動においては、ゲイツ財団やフォード財団といったfoundation や個人による寄付が大きな役割を果たしている。さらに、寄付税制が、フィランソロフィ(philanthropy:慈善活動)を後押ししている点が特徴的である。また、ワシントンDCのシンクタンクには一流の人材が集まっていることも重要なポイントだ。

――先生は中国のシンクタンクについても高く評価されていますが、日本との違いは何でしょうか。

日本の研究者は自分の専門領域には通じているものの、より広い国際的なトピックについて幅広い視野で考える取り組みが不足しているのではないか。また、研究者を支えるスタッフの数も足りていないように思える。一方中国では、多くのシンクタンクが生まれており、国内外の課題について効果的な提言を行っている。彼らの活動は政府からの支援を受けているケースが多いものの、十分な独立性を保って活動している。さらに、(日本と比べて)英語が堪能であるばかりでなく国際情勢に明るい人材も多い。

――なぜ中国ではうまく機能しているのでしょうか。

中国自身が近い将来世界の大国となることを十分自覚しているからではないか。そういう意味では、1940年代や50年代のアメリカに似ていると考えてよいだろう。大国となるにあたって、世界情勢をより詳しく研究しようというインセンティヴを持ち始めている。こういう時代にはシンクタンクを含め国際問題を研究する機関が発展する傾向にある。

日本も1950年代から60年代に同様の動きがあったが、その後、外の世界へ関心を向ける努力が減速した印象がある。


■シンクタンクを巡る資金と人材面の整備を

――日本では影響力のあるシンクタンクはまだ限られています。シンクタンクがより重要な役割を果たすためにはどのようなことが必要でしょうか。

やはり資金調達が大きな課題だろう。この解決には二つの方法がある。一つは政府からの直接の支援。これは中国などが採っている方法だ。二つ目が寄付税制の整備による個人・企業寄付の拡大。これが非営利・独立のシンクタンクを活性化するには不可欠だ。

人材の充実という課題もある。シンクタンクが一流の人材にとって魅力ある職場にならなければならない。中国や米国ではシンクタンクに一流の人材が集まっている。日本のシンクタンクにも優れた人材がいるが、その数が圧倒的に不足している。もっともっと人材が必要だ。


■日本は国際社会でイニシアティブをとれ

――今後10~20年間というスパンで考えたとき、国際社会において日本が果たすべき役割とは何でしょうか。

日本はもっと国際社会でイニシアティブをとっていくべきだ。環境問題・医療問題・農業問題・核の平和利用などいくらでも日本が世界に貢献できる分野はある。例えば、日本のエネルギー効率は極めて高い。一方、ここ数年の米国の環境問題への取組みは効果的なものではなかった。こういうときにこそ日本は米国の取組みを是正すべく、オープンにそして批判的に強いメッセージを送るべきだ。いつも米国のリーダーシップを待っているだけではいけない。

気候変動の問題についても、京都議定書後の新しい枠組みづくりにおいて積極的なイニシアティブを発揮してほしい。2008年の洞爺湖G8サミットはその良い舞台となるだろう。また、国際社会において「middle-size peaceful country(中くらいの平和国家)」としての日本のイメージは非常に良い。核兵器を持たず核の平和利用を行っている主要国が日本だけであることなどがその理由だ。

――一方で、アジアにおける歴史認識問題など、日本のリーダーシップを阻む要因も多々あります。こういった問題にはどのように対処すべきでしょうか。

これは(日本と中韓)双方に問題がある。中韓は意図的に戦後日本の平和的発展に焦点を当てず、反日感情を国内政治に利用してきた節がある。一方で日本は過去の過ちについては誠意を持って受け入れるとともに、アジアを助けていくという気持ちを持たなければならない。この意味では、アジア諸国に目を向けつつ国際協調を目指した大平外交や福田ドクトリンは素晴らしい取組みだった。


■明日を担う日本の若者へ

――最後に、日本、ひいては世界をより良い場所へ変えていこうと奮闘している日本の若者にメッセージをお願いします。

私がここケンブリッジで開催しているハーバード松下村塾の生徒もそうだが、最近の日本の若者はとても頑張っていると思う。以前と比べて、国際社会に対する関心や理解も高まってきていると感じる。また、JICAなどを通じた日本の国際協力に対する国際社会の評価も非常に高い。日本のメディアはこういった若者の取組みを積極的に取り上げるべきだろう。一方で国際機関における日本人の職員数などはまだまだ少ない。緒方貞子氏のように世界的に活躍できる人材がもっと育ってくれることを願っている。

個々人の取組みは大きなものではないかもしれないが、それが大きなネットワークとなればきっと世界にインパクトを与えることができる。頑張ってほしい。


〔インタビューを終えて〕

ケンブリッジにある私邸で熱心に日本人学生を指導してくれている先生(私は塾生であるから常々”Sensei”と呼ぶことにしている)は今回もにこやかに私を迎えてくれた。先生からのメッセージはいつも日本に対する愛情と期待に満ちている。しかし、その好意に甘えるばかりでは日本の将来も覚束ない。先生の期待に応え、この社会をより良い場所に変えていくことは、我々一人ひとりが担うべき責任なのだから。


【Interviewer】
山崎 貴弘
(MPIフェロー・2007年度ハーバード松下村塾幹事)
インタビュー日:2008年1月23日
於:ボーゲル教授私邸
※英語でのインタビューを和訳後、先生のチェックを行った。

date: 2008.02.04

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