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特定非営利活動法人MPI (2004年内閣府認証取得) |
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Interview地域で育児をサポートする社会へ:駒崎弘樹氏〔フローレンス〕保育業界における最大の難問と言われる「病児保育」について革新的なビジネスを開始したNPO法人フローレンス。立ち上げたのは、まだ25歳の若者、駒崎弘樹さんです。「育児を皆でサポートする地域を創りたい」と語る“ソーシャル・ベンチャー”の先駆者に、その思いと構想を聞きました。
地域で育児をサポートする社会へ― ソーシャル・ベンチャーの挑戦 ――駒崎さんは慶応義塾大学在学中からITベンチャー企業の経営者として活躍の後、2004年にNPO法人フローレンスを立ち上げた。「病児保育」という領域での起業の背景には、自らの実体験がある。 子どもの急な発熱のような臨時の事態にベビーシッターでは十分な対応ができず、お母さん自身で看病した結果、仕事と両立できなくなってしまったわけです。 その話を聞いて、子育てを取り巻く環境が昔と今とで随分変わっていることを痛感しました。僕が子供の頃も母は働きに出ていましたが、当時は近所に「松永さん」という親切なおばさんがいて、僕が熱を出したときなど、その人が代わりにお世話をしてくれていたのです。 しかし、今はもう松永さんはいない。子育てが近所の人々の助け合いの中で行なわれる時代ではなくなっている。それがとても残念に思え、地域で子育てをしていくような社会にできないかな、と考えるようになりました。その問題意識が徐々に高まった結果、NPO法人フローレンスを立ち上げたのです。
――ITベンチャーからNPOで起業。転身の理由を説明するもう一つのカギは、「ソーシャル・ベンチャー」という、まだ日本では聞き慣れない概念だ。フローレンスのホームページでは、「社会的問題を事業によって解決する」ソーシャル・ベンチャーの波を先駆者として巻き起こしていく決意が謳われている。 そんなとき、アメリカで、ビジネスを通じて社会的問題を解決していくソーシャル・ベンチャーが次々に生まれていることを知り、衝撃を受けました。 例えば、シティイヤーという課外授業を行なう教育系のソーシャル・ベンチャーがあります。ハーバード大卒の20代の若者が起業したものですが、予算規模は現在40億円、全米15箇所に支部があり、各地で公教育の補完的役割を果たしています。またKaBOOM!というNPOは、行政に代わって公園を造る活動をしており、8年間で全米700の公園を造っています。 そういう実績は、ビジネス上の手法を駆使しているから可能になっています。例えばNPOにもしっかりマーケティングの部門があるわけです。そして、ある一つの地域で起こしたイノベーションを全米に展開していく力もある。ただ、彼らが実現したいことは収益拡大ではなく、その先にあるもの――良い公園を創るとか、若者にリーダーシップを教えるといったことなのです。 そういうNPOを日本でもやりたい、ソーシャル・ベンチャーの動きを起こしていきたい、という思いから、NPOという形での起業を選択しました。
■地域で育児をサポートする。そんなコミュニティの形を実現したい ――地域を挙げて子育てを、と考える駒崎さんが考えたのは、子育て経験のある中高年層の力を活用することだった。「子どもが熱を出しちゃって……」というときは、地域のベテランママが「こどもレスキュー隊員」として助けに来てくれるというわけだ。子どもの病気は、どんな親にとっても気掛かりな問題。フローレンスのビジネスモデルの特徴である一種の保険の枠組みは、親たちに大きな安心感を与えている。 ニーズは高いです。まだ立ち上げて間もないのですが、3月に説明会を開いた際にもすごく多くの問い合わせがあり、説明会の参加受付枠はすぐに一杯になります。病児保育の分野で定額制を採るのは前例の無いことですが、お客様に困ることはありません。むしろ今は、保育をする側(子育て経験のあるベテランママたち)の募集に力を入れています。 地理的に遠い所にいる人では、お子さんの急な発熱の事態などに対応できませんよね。だから、フローレンスのモデルは地域密着型。その地域のお子さんの保育を、その地域の人々で助け合う形です。これはベビーシッター業界では無謀の極みと言われました。自らマーケットを狭めている訳ですから。それでも、僕はコミュニティで育児をサポートしていく形を創りたいんです。 それに、「こどもレスキューネット」の隊員の方々も、収入を得る目的だけで隊員になってくれているわけではありません。募集するとき、最初は「パート募集」と広告を打ったのですが、一向に申込がありませんでした。それが、「あなたの子育て経験を社会に活かしましょう」というメッセージにすると、やりたいという方が現れた。そういう思いをしっかり持っている方が来てくれています。理念や信念に、人はコミットするんですよね。 ――現在、こどもレスキューネットには10人の隊員がいて、その中にはボランティアで活動している人もいる。隊員志望者にはその思いをしっかりと確認する一方、病児保育所での実習など事前の研修も充実させ、万全のサービス提供体制を敷く。地域で育児をサポートする枠組みが、着実に現実化している。
また、子どもが病気の場合や、怪我をした場合だけでなく、例えば子どもがメンタルな悩みを抱えたときにどうケアするか、というような問題もあると思うのです。現代、社会も個人の価値観も多様化しており、それに伴って問題も多様化しています。行政が予め用意したサービスのメニューでは足りません。だから、様々な人たちが力を合わせて新しいサービスを生み出していくことが必要です。 ――家族の在り方の多様化は、しばしばネガティブに捉えられる。しかし、「家族の崩壊」、「悪しき個人主義の帰結」、「今こそ“家族力”の再建を」といった論調はナンセンスだと駒崎さんは言う。 いわゆる“理想の家族”像を掲げて、こういう家庭に生まれなきゃダメ、というような見方は間違いです。選べない初期設定によって人生が左右されるようなことがなく、どんな家庭に生まれたって何でもできるんだという、そういう社会にしていきたいですね。そのためにこそ、子育ての社会化が必要。社会が子育てにコミットできる枠組みが必要です。 そのためには、個別具体的な話を一つ一つ解決していくこと。僕はまず病児保育に取り組んでいますが、他にも様々な事業が湧き出て来ないといけない。この市場を広げていくこと、いろんな人たちが参入して来ることが必要です。 僕が敢えて「ソーシャル・ベンチャー」という言葉を大々的に掲げている理由もそこにあります。世の中を動かし、担っていくのは政治家や官僚だけではありません。社会のために働きたいと思う人たちに、どんどんソーシャル・ベンチャーを起こしてほしい。若い人たちが、自分の感じた問題に対して自ら飛び込み、解決のために取り組んでいく。そういう自律的な社会を創っていくべきだと思うのです。 ――社会全体のあるべき姿について語る真剣な口調には、ソーシャル・ベンチャーのパイオニアとしての気概がにじむ。そう、世の中を動かすのは政治家や官僚だけではない。現に今、彼の情熱と行動が、世の中を動かし始めているのだ。
※このインタビューは2005年4月に実施。肩書き等は当時のものです。 date: 2005.06.02 |
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