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Interview

メディアから見た「Y世代」:片岡英彦氏〔MTVジャパン〕

今後の日本社会を担う「Y世代(10代後半~20代前半)」の底力を探る企画。世界最大の若者向け音楽エンターテイメント専門チャンネルを運営するMTVでご活躍中の片岡英彦さん。「顧客の中心はY世代だし、一緒に仕事しているスタッフの多くもY世代です」。さまざまな角度からY世代と関わっている片岡さんに、Y世代の強みや弱み、Y世代だからこそ生み出せる価値や課題について、存分に語っていただきました。

■Y世代の閉塞感は「オンリーワン」のせい?

――昨今、ベンチャービジネスなどでY世代が活躍している例も聞きますが、一方では増加の一途をたどるY世代のフリーターの問題のように、どこか閉塞感を感じているY世代が多いように思えます。

Y世代の人たちが生き甲斐を見出せずに一種の閉塞感を感じているとしたら、その原因って、上の世代に比べて価値観が過度に多様化し、その結果として競争が少なくなったことが挙げられるんじゃないかなと思います。

これは僕の仮説ですけど、例えば、戦争を経験している世代(現在、約60歳以上の方)って、戦後の貧しい時代を生き抜くために苦労した世代。生活を切り盛りするのに必死な時代だから、「個性を発揮する」余裕なんてほとんど無くて、価値観は今ほど多様化していなかった。だから、この人たちは自分の生き方について必要以上に悩んだり、立ち止まったりすることが無かった。

その後の団塊の世代(現在、約50-60歳代の方)は、高度経済成長の中で、良い大学に入って良い会社に入ることが良しとされる、ある程度画一的な価値観を持っていた世代。

僕が属するX世代(現在、30-40歳代の方)は、上の世代に比べて、自分の個性を求めるようにはなったと思います。ただ、同世代の間で、学歴にせよ、出世にせよ、激しい競争をしているんですね。競争の中で負ければ、それは「閉塞感」じゃなくて「挫折感」なんですよ。そこがY世代との一番の違いだと思います。

Y世代は、同世代間での競争が少なくなった世代でしょう。個性の追求とか価値観の多様化によって自分の属するカテゴリーが細分化されたし、世代の人口自体も少ないですし。競争が少ないから、挫折感の代わりに、閉塞感を感じる。

「競争に負けること」がカッコ悪いのではなくて、「競争すること」自体をカッコ悪いというふうに考えているんじゃないでしょうか。「オンリーワン」の価値観、受けているでしょう。個性の追求、オンリーワン。だけど、属するカテゴリーがどんどん細分化されていけば、自動的に誰だってオンリーワンになれちゃうんですよね。

でも、誰かと競争して勝ち取ったものでない「オンリーワンな自分」になんて、あまり自信を持てない。これから進むべき道もオンリーワンでありたい、と妙に考え込んじゃうから、なかなか将来を描けずにいる。Y世代が閉塞感を感じているとしたら、そういうことじゃないでしょうか。

――就職活動の「自己分析」も「オンリーワンな自分」を探す取り組みかも知れませんね。フリーターやニート(NEET; Not in Employment, Education or Training)の問題などもありますし、Y世代の悩みには就職に関わるものが多いようですが、片岡さんの頃とは随分状況が異なりますか。

確かに、僕が就職活動をした頃は、大卒だとほとんどはそのまま就職していましたね。少しだけ、院に進学する人がいるくらいで。だから、今のように、就職しないとか、海外留学してMBAを取得するとか、起業するとか、就職以外の選択肢は考えもしなかったですね。

フリーターやニートについて言えば、現代は、定職に就いて働かなくてもバイトの収入や親からの援助で生きていける環境があり、それがいわゆるモラトリアムを助長している面はあると思います。

ただ、留学したり、旅に出たり、いったん立ち止まることができるのはY世代の強みだと思います。僕も含めてX世代の人って、これまであまり立ち止まらずに、ずっと上り調子で来たんですね。だから、積み上げてきたキャリアを途中で中断することには、まだまだ抵抗感や恐怖感を抱いて立ち止まれない人って、多いと思うんですよ。今は、いったん立ち止まるだけなら誰でもできる時代ですから。そこでどんな力を身に付けるかが重要だと思います。

■「わざとらしさ」を即座に見抜く――メディアから見たY世代

――他の世代と比べてY世代は、商品やサービスに関する情報が豊富な環境の中で育っています。片岡さんは、MTVでそのようなY世代を顧客としているわけですが、メディアの側から見て、Y世代にはどんな特徴がありますか。

メディアの側から分析すると、Y世代は他の世代と比べて嗜好が細分化されていると思います。例えば、焼酎とビールの好みの違いなら誰でも理解できるけど、Y世代は、ビールの中でもメーカーやブランド毎に自分のこだわりがあったりもする。だから、「とりあえずビール!」とはいかなかったりする。

それに実際、情報をいっぱい持っている。だから、これまで通りのCMには免疫ができていて、作り手の意図や、あざとさが全部バレてしまう。わざとらしい、と感じられるとそれだけでダメなんですね。

MTVのイベントなんかですと、なるべく会場のお客さんと出演者が垣根なくインタラクティブで交流できるような参加型のイベントになっています。お客さんを巻き込んでのハプニングやアドリブ的な展開など全部含めてイベントの重要な部分を担うようになっている。作り手だけが一方的に頑張ってコンテンツを作り、お客さんに情報を提供するという形ではなくなっています。

顧客への自然な形でのPRは時代につれて難しさが増してきたわけです。Y世代は他の世代以上にそんな傾向が強くなっている。あまり宣伝色やPR色を出し過ぎて、わざとらしさを感じると、途端に冷めてしまうんです。

眼の肥えたY世代を意識して、新しいスタイルによる広告宣伝が生まれてきています。例えば、プロダクト・プレイスメント(Product Placement)と言って、宣伝したい商品やサービスを、番組のコンテンツの中で登場させる手法。スポンサーが製造しているパソコンをドラマの中でさり気無く使う、というのがこれに当たります。最近はプロダクト・インテグレーション(Product Integration)といって、番組というコンテンツ自体を、商品が内包された広告にしてしまう手法まで生まれていますね。

■Y世代の求めるものはY世代が創る――クリエイティブな力を活かせ

――顧客としては難しいターゲットであるY世代ですが、片岡さんは、一緒に仕事をする者としてもY世代と関わっていますね。「Y世代だからこそ生み出せる価値」のようなものがあると思いますか。

顧客が、商品やサービスの供給側を厳しく見極めるようになると、顧客のニーズを供給側だけの価値観だけで把握することが難しくなってきます。CRM(Customer Relationship Management)などによって、実際に顧客からニーズを聞き出して、ボトムアップで商品やサービスが生まれていく流れが生まれていますよね。

それと同じで、Y世代がほしがっているものは、Y世代に近い人たちが考えるのが一番いいんです。MTVのターゲット顧客は、10代・20代ですから、僕みたいな30代半ばの者が無理にアイデアを出そうとしても難しい。どんなに頑張っても、僕は彼らの年代じゃないから、彼らのニーズを想像することしかできないし限界があります。

だから企画のアイデアなどは、なるべくMTVのターゲット顧客と同じ年齢層の若手社員の発想に任せています。管理職は若手社員に対抗して思いつきでアイデアを出すのではなく、若手が極力、自由に発想できる環境を整えることに注力しています。もちろん、経験に基づいて助言したり、予算管理などは行ないますが。

つまり、MTVでは競争力の源泉が若手社員の新しい発想なんです。伝統的な日本の会社だと、ピラミッドの一番の下に位置することが多い20代の若手が、MTVでは最も重要な役割を果たします。逆ピラミッド型の組織なんです。もっと言えば、若手社員は、社員であると共にMTVの「顧客」なんです。彼らがやりたいと言っていることを、どうやったら実現してあげられるか、という発想で仕事をしています。

それくらい徹底して「顧客」からの声を聞かないとニーズをつかめないほど、Y世代という顧客のニーズは高度化していると言えますし、そういう所にY世代にしか生み出せない価値があるのは確かですね。

――最後にY世代へのメッセージをお願いします。

Y世代が自分自身の進むべき道を見つけ、社会にインパクトを与えるためには、よりクリエイティブな力を発揮するべきだと思います。

Y世代は、様々なメディアを介して、無数にある選択肢の中から自分に合ったものを選んでくる能力は非常に発達していると思います。その一方で、選ぶことはできても、自分で何かを生み出すことは得意ではない、という人も多いのではないでしょうか。選ぶことに時間やエネルギーを割きすぎてしまっていて、もっと重要なクリエイトするということを避けているような気がします。

社会にインパクトを与えるためには、リスクをおかしてでも、何かをクリエイトしていく必要があるんですよね。

ただ、あまり個性とかにこだわりすぎて、モラトリアムな時間に浸って結局、最期まで何もしない、というのは違うと思います。個性って、結局、自分と「自分以外の他人たちの平均値」とのズレでしかないんですよ。だから、個性的でいたい、って騒いでいる人ほど、自分じゃなくて他人の目を気にしていることが多い。何も生み出さない、ただの「こだわりやさん」で終わってしまうのは惜しいと思います。

本当の個性って、自然体でいても、その人からにじみ出てくるようなものだと思うんです。自然に身に付けてきた感性とか。そういうものを大事にしてほしい。抽象的ですけど、それが結局、Y世代の、彼ら自身の、強みになるわけですから。


片岡英彦〔かたおか・ひでひこ〕氏
MTV JAPAN Inc.(エム・ティー・ヴィー・ジャパン株式会社)広報部長。94年、京都大学卒業後、日本テレビ放送網株式会社入社。報道記者として阪神大震災、オウム事件報道に携わった後、広報局で「電波少年」「劇空間プロ野球」などの番組宣伝を担当。01年アップルコンピュータ株式会社カスタマーコミュニケーション課長。iPod、iBookなどアップル製品のサポート情報の提供、危機管理を強化。3つの会社を通して様々なコミュニケーションの仕事に携る。04年1月より現職。


※このインタビューは2005年1月に実施。肩書き等は当時のものです。

date: 2005.02.03

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