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特定非営利活動法人MPI (2004年内閣府認証取得) |
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Vanguardナノテクのビジネスインパクト(松岡洋平)ナノテクノロジー。もはや聞き慣れない言葉ではないだろう。物質がナノサイズにまで小さくなると、これまでは不可能だった物性が発現する、というところから始まったナノテクのインパクトは、ますます広がりを見せようとしている。 翻ってみれば、人類の歴史には、石器から青銅・鉄・鋼……と材料が移り変わるところに、時代の変局点があった。半導体の登場により飛躍的な情報世界の拡充が進んだ20世紀はさながら「珪素」、つまりシリコンの時代であった。では、21世紀は何の時代だろうか。 それはおそらく「炭素」の時代であろう。旧来の技術や工学の限界を打破し、さらなる可能性の探求が行われるなかで、「ナノ」の持つ意味合いが今後さらに強まってくるのは間違いない。
・高集積化:半導体など、よりたくさんのものを詰め込める。 まさに「小さければ小さいほど良い」という話のオンパレードだ。事実、ナノテクノロジーは、その「小さい」ことが持つ可能性に着目され、ITやバイオ、環境、エネルギー、医療など、さまざまな産業での応用が期待されるようになったのだ。 ナノテク自体が社会で叫ばれるようになったのは、ここ10年くらいのことだ。それにはフラーレンとカーボンナノチューブ(以降CNT)という2つの物質の発見が非常に重要な意味を持っている。 CNTは、1991年にNECの飯島澄男主席研究員(当時)がフラーレンの製造中に発見した物質である。発見当初、ススのように見えたそれは、炭素が六角形につながり、網目のように巻いた形状を持つ、円筒型の物質であった。 ■図表1・カーボンナノチューブ 現在では、ナノテクといえばCNT、とすぐにイメージされるほど有名になっているが、では何がCNTのすごいところなのだろうか。その特性は以下のようなものだ。 ・電導性:銅よりも電気を伝えやすく、チューブの構造によって伝導体もしくは半導体の性質を持つ。 これらの特性は、円筒が単層/多層どちらになるか、ということで異なってくるが、現在では単層CNTに焦点が当てられ、フラットパネルディスプレイや燃料電池への応用が研究されている。 もう一方で着目されるフラーレンは、以下のような機能を持つ。 ・安定性:ダイヤモンドと同等以上の高度を持ち、強圧下でも変形しない 現状では、応用研究としてガン治療薬などの医薬、及び材料としては超伝導・リチウムイオン電池などへの応用が推進されている。 こういったナノ物質が上記であげた「小さいことの意味」すなわち高集積化・高感度化・高機能化・属性操作を可能とすることで、これまで不可能と考えられていた機能の実現や、一般に背反すると思われていた機能を併せ持つ物質の開発など、分野を問わず、さまざまな可能性が広がってきたのである。他にも多数のナノ物質が存在しておリ、興味のある方はナノエレクトロニクス.jpのウェブサイトをご参照いただければと思う。
ナノテクのビジネスインパクトについて知ることは、その応用範囲の幅広さと共に、いったいどのようなプレーヤーがナノテクの研究・開発に取り組んでいるのかを理解することにもなるだろう。 下表をご覧いただきたい。光触媒、燃料電池、DDSなど、代表的なナノテクの活用ポイントと具体的な製品例を挙げてみた。 ■図表2・ナノテクのビジネスインパクト このように具体例を見ると、やはりエレクトロニクスやバイオ関連の技術が多く、とっつきにくい印象を持たれると思う。そこで、もっと一般的で我々にとって身近な、わかりやすいナノテクの例として、「ゴルフクラブ」と「下着」についても述べてみたいと思う。
もともと、「MAJESTY」自体はマルマンが90年代から販売しているゴルフクラブの最上位製品だったが、フラーレンの採用によって、肉厚・質量を軽減して重心設計などを見直すことにより、15ヤードの飛距離アップを実現した代物だ。 ここで難しいのは、一般にファイバーが用いられることの多い材料のところに、ナノテクであればCNTの採用をすぐに思いつきそうなところだが、 CNTでは硬度は十分だが脆くなってしまったという。そこでフラーレンを用い、かつ混合率を調整することにより、最適なバランスを見つけたのである。 つまり、どんなに優れた機能を持っていようが、最終用途に対するフィットの部分を紡がない限り、新たなインパクトを生み出すことはできないのである。 この事例の着目すべきところは、顧客動向として「新素材採用」というフレーズへの反応がよいことから、マルマンが常に材料化学関連の最新情報をチェックし、自社に採用可能かを継続的に精査していたことである。勿論、当初はフラーレン自体が非常に高価(1グラムで10万円以上)だったこともあるが、量産化にメドがついた時点で他社に先駆けて採用することで、大ヒットという結果を生むことができたのであった。
そもそも、化粧品の分野では、早くからナノテクに対する注目度が高く、積極的に技術の取り入れが行なわれてきたという背景がある。最近の商品で “しっとりタイプ”などの名を持つ、保湿効果をうたう製品のほとんどにナノテクが関与しているといっても過言ではない。ナノテクによって実際の肌と同じような細胞間の構造を再現することが可能なため、皮膚の水分を保ったり、肌の酸化を防いだりすることができるのである。 この化粧品分野でのナノテクの活用から、“肌を着る”というコンセプトのもと、繊維自体が肌の酸化を防いだりしっとり感を高めたりすることを訴求する商品として開発されたのがナノテク繊維素材であった。
ゴルフクラブにしろ下着にしろ、重要なのは「ナノテクだから」という理由ではなく、「(ナノテクによって実現された)新たな機能」に対して消費者が反応するか、という視点だ。単純に機能的な材料を開発した、といったところで、消費者のニーズに沿わないものはただの自己満足でしかない。ナノテクのような新技術には、自らが消費者から新たなニーズを引き出していけるようなマネジメントが必要となってくる。 ナノテクの普及に従い、ビジネス上の位置づけ自体も大きく変わりつつある。上記で挙げたCNTなども、現在では生産プロセスや触媒技術など、さまざまな周辺技術を含め開発が全世界的に急ピッチで進んだため、実用化までの期間がかなり短縮されるようになってきた。 その最大の要因が「量産技術の確立による低価格化」だ。当初は1グラムあたり数万円以上もしていたCNTも数年のうちに桁が小さくなる、というスピードで量産化・低価格化が進展したために、これまでは価格がネックとなり用途として考えられることの少なかった分野でも、実用化を目指した開発が進められるようになってきた。 日本はCNTが発明された地でもあり、世界的に見てもナノテクの分野では世界の第一線に位置しているといっても過言ではない。ただし、材料供給による利益獲得を目指していた企業は大幅な方針転換を迫られるほど、技術そして業界のスピードは早い。また、低価格化を推進する要因として、中国科学院の技術をベースにCNTを量産する中国企業の台頭が、さらなる価格競争の激化を予見させる。 いちはやく技術を開発しても、ビジネスモデルとして失敗する。そんな事態を避けるためには戦略的に知的財産を取得し、ライセンス供与など権利ビジネスによる収益を柱にするなどの知財戦略と連動した事業展開が必須だ。そしてまた、エンドユーザを含む顧客のニーズに対し、ナノテク活用によるビジネスインパクトと費用対効果を勘案し、自社ならではの戦略を取るためのバランス感覚が必要とされるだろう。 ■図表3・筆者が選んだナノテク開発分野 date: 2005.02.20 |
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