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Interview技術と営業のCo-work:増田和悦氏〔元・楽天CIO〕現代ビジネス界において、何かと羨望の的にされる「ベンチャー企業」。その成功物語では創業者にのみ光が当てられがちだが、もちろん会社の発展は創業者一人の力だけでできるものではない。成功の裏には、経営者や企業を支えてきた「影の立役者」がいるのだ。インターネットベンチャーの先駆的存在である楽天でCIOを務めた増田氏に話を聞いた。
技術と営業のCo-work――ベンチャー・影の立役者に聞く(2)
私が楽天と関わり始めたのは、創立者である三木谷と本城が楽天を起業して間もない頃でした。ちょうど、私が前にいた職場で働いていたアルバイトの学生が、楽天でもアルバイトをしていたのです。その学生を介して、楽天を紹介されたというわけです。 当時の楽天は、三木谷が営業、本城がシステム開発、という役割分担でした。初めて二人に会ったとき、彼らが描く壮大な構想に驚きましたが、「一緒にやろう」という誘いを受けたときには二つ返事で引き受けていました。 ――楽天のシステム開発において、他社には無い優位性とは、どのようなものだったのでしょうか。 楽天が、ある程度世の中に認知され始めた頃の1998年、あるEC業界のレポートに、楽天は「ローテクで、ハイコンテンツ」なサイトだと書かれたことがありました。コンテンツは豊富だが、サイトの作りがダサい、というような言われ方をしたわけです。システム開発者としては、非常に複雑な思いをしましたね。 ただ、楽天のシステムは、表にはなかなか出て来ない部分が勝負で、優位性もここにあると思っています。例えば、「楽天市場」は、出店者がそれぞれ商品登録をしていますが、タイムリーに、かつ簡単に登録更新をすることができるようになっています。データベースやHTMLに関わる部分の更新は、楽天側で自動で行なう機能を持たせ、店舗側ではワープロやメールが使用できればどなたでも使いこなせるような簡単な仕組みを提供しました。これは、当時としては画期的な技術開発だったという自負がありました。たとえそれが表側に目に見える形では分からないとしても、自分たちが楽天のサービスの根幹を支えているという誇りを持って仕事をしていました。 ――そのような技術開発に関する評価は、外部からはなかなか分かり辛いのかもしれませんね。逆に、会社内部では、技術者に対する評価はどのようなものでしたか。 創業当時は、6、7人で営業とシステム開発を皆一緒になってやっていましたので、システム構築に関わる苦労や困難な部分を皆で分かち合っているという連帯感、信頼感がありました。例えば、営業を主に担当していた三木谷も、自分でプログラミングの本を読み、システムに対する理解を極力深めてから、突っ込んだ質問をしてきたものです。社長自らがそのような姿勢でしたので、開発を担う我々としても非常に有難かったですね。そんなカルチャーが、今の楽天にも根付いていると思います。 ――会社の規模が大きくなるにつれて、増田さんが社内で果たす役割も変化したのではと思いますが、実際には如何でしょうか。 当時の私の役割は、「遊軍的に」、適宜、プロジェクトの手助けをするというものでした。私自身は、マネジメント職よりも、技術に関する理解を深めたい、実際に自分でシステムを開発したい、という思いの方が強かったのです。そういう思いもあって、楽天を一旦辞め、新たな仕事にチャレンジしていましたが、今年の6月に、楽天の100%子会社である「みんなの就職株式会社」(ウェブサイト「みんなの就職活動日記」を運営)に開発担当者として再び勤め始めました。 ――みんなの就職株式会社では、どのようなお仕事をされているのですか。 今はまだ十名ほどの小規模な会社ですが、楽天の創業当時に行なったサーバーの容量拡大や、システムの増強といった経験は、今の会社に必ず活かせると思っています。 ――大学では数学やコンピューターについて勉強されたとのことでしたが、習得したスキルを大学の研究員として探求していくという道ではなく、ビジネスで活かしていこうとお考えになった理由は何でしたか。 高度な技術を開発できたとして、それが社会で広く使われるようになることでより真価が発揮される学術的に技術を研究のも興味深いですが、ダイナミックなビジネスの世界で、多くの人に使われ、社会にインパクトを与えられるような技術を開発するのが魅力的だと思ったからです。 それから、「この人になら騙された気持ちでついていこう」と思わせるような、不思議な人間力を持った三木谷をはじめ当時のメンバーたちとの出会いも、自分をこの世界に連れ出した大きな理由と言えるでしょう。――事業を行なう上で、技術的な面を担当する者と営業を担当する者とのCo-workは避けて通れないものだと思います。楽天において、それがうまく機能した理由は何だと思われますか。 楽天の場合は、営業担当者と技術担当者のお互いが歩み寄る姿勢を持っていた、ということに尽きるのではないでしょうか。担当業務はそれぞれであったとしても、一つの事業を共に行なっているわけです。三木谷の技術を理解しようという真剣な姿勢があったからこそ、私たちもそれに真剣に応えようと奮起しました。営業担当者が、技術のことは分からないから全部任せた、という姿勢だったとしたら、任されているとは言いながらも、共に仕事をしているという連帯感や信頼感を感じることはできなかったかもしれませんね。 ――最後に、本誌の主要読者である若手ビジネスパーソンや学生に対してメッセージをお願いします。 人は、それぞれの立場で自分の存在価値を発揮できれば良いのではないかと思います。三木谷のようにリーダーとして手腕を発揮する者もいれば、私のように技術開発に専念する者もいる。どんな領域であったとしても、それが自分の意思で選んだ道である限り、その分野では誰にも負けないだけのスペシャリティーを追求するべきだと思います。それくらいのプライドを持って仕事をしている者同士が、Co-workし、お互いが歩み寄ることで、初めて社会に価値を提供できる事業が成り立つのだと信じています。 ――ありがとうございました。
※このインタビューは2004年7月に実施。肩書き等は当時のものです。 date: 2004.08.03 |
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